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【2026年版】小規模企業白書から読み解く「人材確保」につながる経営習慣

最終更新日:2026.10.20

小規模企業において、「人材の確保」が深刻な問題になっています。

白書では、この人材の確保に焦点を当てた分析が行われ、採用がうまくいっている事業者ほど、労務管理や組織活性化に積極的に取り組んでいる傾向が見られました。

そこで、この記事では、白書から読み解く、人材確保に繋がる経営習慣をご紹介します。

1.長時間労働の防止や、有給休暇の取得促進といった「労務管理」に取り組む

白書では、労務管理に取り組んでいる事業者は、採用実績について、「採用した(予定人数に到達)」と回答した割合が、取り組んでいない事業者より高くなっています。

また、月平均残業時間の傾向を「減少」と回答した割合も、労務管理に取り組んでいる事業者の方が高く、月平均残業時間の傾向が減少の事業者では、直近3年間で採用した従業員が7割以上定着している割合が高いです。

労務管理に取り組む→残業時間が減らしやすい→働きやすい職場になる→従業員が定着しやすい

という連鎖が起きる可能性が示されています。

労務管理に取り組み、求人情報で「残業時間が減少傾向」「有給休暇取得を促進している」と伝えることで、求職者に、働きやすい職場という印象を与えやすくなります。 入社して実際に残業時間が減少傾向であれば、働きやすい職場として、定着率も上がると考えられます。

「人材確保」のために、今日からできることはこちらです。

  • 残業時間を削減するため、「19時以降の残業は申請制」等、簡単なルールを作りましょう。
  • 有給休暇の取得を促進するため、取得しやすい時期や取得推奨日を設けましょう。
  • 残業時間削減や、有給休暇の取得促進のためにしていることを、求人情報でアピールしましょう。

診断士から一言

人材確保が難しいなか、残業時間の削減や有給休暇の取得促進をすると、就業時間が減少することになります。このため、これらの取り組みは簡単ではありません。

まずは、「水曜日は19時には消灯する」「毎月第3週目を有給休暇の取得推奨週とする」等、小さな取り組みから始めてみましょう。

トップが取り組むことで、従業員にも、「効率の良く働き、きちんと休む」という意識が広がるはずです。

2.従業員の働きがいや貢献意欲を向上させる「組織活性化」に取り組む

白書によると、従業員の働きがいや貢献意欲を維持・向上させる「組織活性化」に取り組む事業者のほうが、直近3年間に採用予定人数を確保できた割合が高いことが示されています。

また、組織活性化に取り組む事業者ほど、売上高や営業利益率が「増加・上昇」と回答した割合も高いことが分かりました。

従業員が意欲的に働ける環境づくりは、人材確保だけでなく、企業の業績にも良い影響を与える可能性があります。

組織活性化への取組内容としては、

・賃金や賞与の引き上げ
・柔軟な働き方の導入
・社内コミュニケーションの活性化

という回答が上位3位でした。

求職者が納得できる賃金水準を提示し、働き方や社内コミュニケーション面の取り組みをアピールすることで、求職者に「働きやすい会社」という印象を持ってもらいやすくなります。

必要な人数を採用し、従業員の貢献意欲を高く保てれば、業務を計画どおりに進めやすくなり、売上高や営業利益率を上昇させられるのだと考えられます。

「人材確保」のために、今日からできることはこちらです。

  • 上司が部下の話を丁寧に聞く、1対1の面談の機会を、月1回など定期的に設けましょう。
  • 時差出勤や週4日勤務等、柔軟な働き方の導入を検討しましょう。
  • 基本給より調整しやすい賞与について、引き上げが可能か検討してみましょう。
  • 柔軟な働き方や賞与引き上げ、定期面談について、求人情報でアピールしましょう。

診断士から一言

従業員の働きがいや貢献意欲は目に見えず、向上させる方法にも戸惑うかと思います。

賃金の引き上げや柔軟な働き方の導入は、従業員にとって大きなメリットがあります。

一方で、一度導入すると見直しが難しいため、制度設計は慎重に検討する必要があります。

まずは比較的取り組みやすい1対1面談など、社内コミュニケーションの活性化から始めてみてはいかがでしょうか。

その際、聞き手である上司は、「相手を否定しないこと」「丁寧に意見を聞くこと」を大切にしてください。

面談を通じて従業員の不満や不安を把握できれば、次に優先して改善すべきことも見えてきます。

3.勤怠管理システムを導入して、労務管理を「見える化」する

長時間労働の防止や有給休暇の取得促進に取り組もうとしても、「そもそも誰がどれくらい残業しているのか分からない」「年休取得率が悪いのは誰かわからない」というケースもあるのではないでしょうか。

紙や表計算ソフトで勤怠を管理している場合、勤怠管理システムを導入することで、勤務状況を集計・把握しやすくなる可能性があります。

ただし、勤怠管理システムを導入すること自体が目的ではありません。重要なのは、勤務状況を見える化し、そのデータをもとに働き方を改善することです。

一般的な勤怠管理システムでは、

・出退勤の打刻
・休暇の申請・承認
・労働時間、残業時間の集計
・年次有給休暇の管理

等ができます。

働きやすさに繋がる活用方法としては、

・人ごとや部署ごとの残業時間を集計して比較し、業務の偏りを見つける手掛かりにする
・年次有給休暇の取得状況を把握し、取得が進んでいない従業員に早めに声をかける

等が挙げられます。

白書では、労務管理に取り組んでいる事業者ほど、勤怠管理システムを導入している割合が高いことも示されています。

勤怠管理システムを使えば、労働時間や休暇取得状況を数値で集計・比較しやすくなります。こうした「見える化」が、労務管理の実践を支える一つの手段になっていると考えられます。

「人材確保」のために、今日からできることはこちらです。

  • 残業が多い人や部署の勤務実績を集計して、労働量に偏りがないか確認し、業務分担を見直しましょう。
  • 勤怠管理システムを導入していない場合、無料体験を試して自社に合うか確認しましょう。
  • 長時間労働の防止や有給休暇取得の促進について、社会保険労務士に相談してみましょう。

診断士から一言

労働時間や年休取得率といった労務管理を見える化しておくことは、早めの採用計画や働きやすさに関わってきます。

業務や受注を拡大しようとしたとき、すでに残業時間が多ければ、既存の従業員だけでは対応できず、新たな人材の確保が必要になる可能性があります。

また長時間労働や、年休が取りにくい状況は、職場の働きやすさを低減させてしまいます。

労務管理を見える化しておくことで、早めに採用計画を立て実行する、業務の偏りを分析し長時間労働を是正する等、これらの状況に対応しやすくなります。

労務管理に取り組むには、労働関連法規や労務のスペシャリストである社会保険労務士に相談するのも、ひとつの手です。

今後の事業展開を見据えた人事制度など、経営目線からの労務管理の相談でしたら、中小企業診断士もご検討ください。

4.まとめ

2026年版小規模企業白書では、採用予定人数を確保できた事業者や、従業員の定着率が高い事業者に、労務管理や組織活性化への取り組みが見られることが示されています。

それらのデータを参考に、人材確保のために今回ご紹介した取り組みはこちらです。

  • 労務管理に取り組む
    例:残業時間の削減、有給休暇の取得促進
    → 働きやすい職場づくりや、従業員の定着につながることが期待できます。
  • 組織活性化に取り組む
    例:柔軟な働き方の導入、社内コミュニケーションの活性化、賃金・賞与の見直し
    → 人材確保だけでなく、売上高や営業利益率にも良い傾向が見られます。
  • 勤怠管理を「見える化」する
    例:残業時間や有給休暇の取得状況を集計・確認する
    → 業務の偏りや長時間労働などの課題を早めに把握し、対策につなげやすくなります。

これらの取り組みは、一朝一夕に効果が表れるものではありません。また、すべてを一度に始める必要もありません。

まずは、月1回の1対1面談を始める、残業時間を集計してみるなど、自社で取り組みやすいことから一つ始めてみてはいかがでしょうか。

人材確保というと、採用活動に目が向きがちです。しかし、「採用すること」だけでなく、「働き続けてもらえる職場をつくること」も、人材確保の重要な取り組みです。

白書のデータを参考にした上記取り組みの提案を、自社の人材確保や職場づくりを考えるきっかけとして活用していただければ幸いです。