小規模企業にとって、自社の商品やサービスの品質を維持・向上することは、顧客から選ばれ続けるために重要です。
しかし、日々の業務がルーティーンになってしまうと、業務の中にある不適切な作業や非効率な工程に、気づきにくくなることもあります。その結果、品質の維持・向上や、業務円滑化といった「運営管理」の取り組みが、おろそかになってしまう可能性があります。
そこで、この記事では、2026年版小規模企業白書(以下、「白書」)を参考に、商品やサービスの品質を維持・向上したり、業務を円滑に進めたりする取り組みである「運営管理」で、成果を生む経営習慣をわかりやすく紹介します。
1.品質管理に取り組む
①品質管理を始める
白書によると、品質管理(品質を担保するための管理)に取り組んでいる事業者のほうが、営業利益率が「上昇傾向」と回答した割合が高くなっています。
顧客数についても、品質管理に取り組んでいる事業者のほうが、「増加傾向」と回答した割合が高くなっています。
白書のいう品質管理とは、
- 業務に使う設備等の点検をすることや、
- 商品の出荷前、サービスの提供前にチェック項目等に基づいて品質を確認すること
です。
設備を点検することで、不具合による品質トラブルの発生を防ぎやすくなります。
一定のチェック項目に基づいて品質を確認することで、担当者が変わっても、商品やサービスの品質を一定に保ちやすくなります。
②品質管理を定期的に見直す
また白書では、品質管理に関する「定期的な見直し」を行っている事業者のほうが、営業利益率・顧客数が上昇・増加傾向にあることも分かっています。
品質管理に関する定期的な見直しとは、顧客のクレームや意見、不良品率等を把握した上で、作業工程やサービス内容の見直す取り組みです。
品質管理に取り組む事業者ほど、顧客数や営業利益率が良い傾向にあることから、顧客満足につながる品質の維持・向上が、事業成果にもつながっている可能性が考えられます。
「運営管理」で成果を出すために、今日からできることはこちらです。
- 主力商品やサービスについて、品質維持のためのチェック項目を3つ、考えてみましょう。
- 主力商品やサービスについて、「気に入っている点」「改善してほしい点」を、顧客企業や消費者に、アンケートをとってみましょう。
- 主力商品について、まず10日間、毎日、不良品率を記録して、変化や傾向を確認してみましょう。
※製造業なら不良品率、サービス業ならクレーム件数や手戻り件数など、業種に合った指標を記録してみましょう。
診断士から一言
品質管理と言うと、少し難しく聞こえるかもしれませんが、大切なのは、「お客様に満足してもらえる商品やサービスにする」という想いです。
大企業と比べて経営資源に限りのある小規模企業にとっては、自社ならではの商品・サービスの品質を強みにすることが重要になります。
まずは、顧客の声を一つ聞く、チェック項目を3つ作るなど、小さな取り組みから始めてみてはいかがでしょうか。
2.社内ノウハウを蓄積・共有する
①業務の円滑化に繋がる
白書のいう「社内ノウハウを蓄積・共有」とは、業務上の技術・知識・経験(=ノウハウ)が、特定の従業員に依存しないよう、組織として蓄積・共有に取り組むこと、を指します。
社内ノウハウを蓄積・共有する上で有効だった取組内容としては、
- マニュアルや手順書の整備
- 社員同士の交流機会の提供
- 社内勉強会・研修の実施
を挙げる事業者が、白書では多く見られました。
取り組みの結果、社内ノウハウを蓄積・共有することで、
- 担当者不在時でも業務が滞りなく遂行できるようになった
- 業務の引継ぎが円滑に行えるようになった
と回答した事業者が多く見られ、社内ノウハウの蓄積・共有が、業務円滑化に寄与している可能性がうかがえます。
②業績や働きやすさにもつながる
また白書では、社内ノウハウを蓄積・共有する取り組みの結果、
- 製品・商品・サービスの品質が安定した
と回答した事業者も多く、社内ノウハウの蓄積・共有が、品質管理にも繋がる可能性が示されています。
白書によると、社内ノウハウの蓄積・共有に取り組む事業者は、営業利益率・顧客数が、上昇・増加傾向にあると回答した割合が高いです。
残業時間についても、社内ノウハウの蓄積・共有に取り組む事業者は、減少と回答した割合が高いです。 社内ノウハウの蓄積・共有によって、業務の効率化や品質の安定が進み、それが営業利益率や顧客数、残業時間の改善にもつながっている可能性があります。
「運営管理」で成果を出すために、今日からできることはこちらです。
- 主力商品やサービスに必須の技術・知識・経験(ノウハウ)を、5つ抽出してみましょう。
- その5つのノウハウについて、簡単でも良いので手順書や引き継ぎ書を作成してみましょう。
- 自分の業務のうち1つの手順を他の社員に説明する、月1回の「ミニ勉強会」を開催し、社員同士の交流とノウハウ共有の場にしてみましょう。
診断士から一言
自社オリジナルの、技術・知識・経験といったノウハウの蓄積・共有は、大きな強みになり得ます。長年の経験や試行錯誤によって蓄積されたノウハウは、真似されにくく、自社ならではの競争力になり得るからです。
この強みとなるノウハウを、下の世代に引き継いだり、品質を安定させたりする助けになるのが、マニュアルや手順書です。文字に書き起こせない経験が必要な技術なら、社員交流や研修、OJTで、ベテラン社員から中堅・新人社員に技術継承することも有効になります。
強みの維持・強化のためにも、ノウハウを蓄積・共有する取り組みを、まずは1つ始めてみることをお勧めします。
4.まとめ
2026年版小規模企業白書では、品質管理や社内ノウハウの蓄積・共有に取り組んでいる事業者ほど、営業利益率や顧客数が「上昇・増加傾向」と回答した割合が高いことが示されています。 それらのデータを参考に、運営管理で成果を出すために今回ご紹介した取り組みはこちらです。
- 品質管理に取り組む
例:業務で使う設備の点検、商品・サービスのチェック項目に基づく確認
→ 品質を安定させ、顧客から選ばれ続けることにつながる可能性があります。 - 品質管理を定期的に見直す
例:顧客アンケートを実施する、不良率やクレーム件数を記録する
→ 顧客の声を改善に活かし、商品・サービスの品質向上につなげることができます。 - 社内ノウハウの蓄積・共有に取り組む
例:マニュアルを作る、社員の交流会や勉強会を開催する
→業務効率化や品質の安定に繋がり、業績や残業時間にも良い傾向をもたらす可能性があります。
これらの運営管理の取り組みを新たに始める場合、業務の工数が増えるので、手間に感じる場合もあると思います。
しかし運営管理は、品質の安定、顧客満足度上昇、業務効率化、強みの維持・強化等に繋がる大切な取り組みです。
まずは、品質チェックの項目を1つ決める、顧客の声を1つ集める、重要なノウハウを1つマニュアル化するなど、自社で取り組みやすいことから始めてみてはいかがでしょうか。
白書のデータ参考にした上記取り組みの提案を、自社の商品・サービスをより良くし、事業の強みを育てるきっかけとして活用していただければ幸いです。